
この地のACは、バイヨンヌで大西洋に注ぐアドゥール河とその支流の中・上流域にある。葡萄栽培の歴史は古く、ガロ・ローマ時代に遡るが、中世から盛んになった、聖地・デ・コンポステラ(スペイン)への巡礼の道筋にあったし、又、ブルボン王朝初代王アンリ4世の生まれたナバール王国の足元でもあったから、 良質のワインを生み出す社会・経済的背景は持っていた。
同時に、ピレネー山脈の麓で、大西洋の暖かな空気が流れ込むと言う自然条件にも恵まれていた。
しかし、フィロキセラ禍で、ここも壊滅的打撃を受けた。それを乗り越えたのは、第二次大戦後である。野心的な生産者が輩出し、伝統品種に近代技術を加え見事に復興した。

海岸はコート・ダジュールトと並んでフランス屈指の海水浴場で、その中でもピアリッツには一流ホテルがあり、毎年何万人と言う避暑客が訪れる。
小さな漁村であったビアリッツが脚光を浴びるようになったのは19世紀で、ヴィクトリア女王が訪れ、王族・貴族のビーチとして人気の場所になった。
Madiran (マディラン)

この地はスペインにある中世の巡礼地ー<サンチャゴ・デ・コンポステラ>への道筋に当っていて、ここのワインは巡礼者に人気を博していた。畑の歴史は古く、 ガロ・ローマ時代に遡ると言われている。
畑は珪石や石灰岩を含んだ粘土質の土壌の台地に畑があり、色が濃く、フランボワーズの香りを持ち、骨組みが非常にしっかりとしてタンニンが強い男性的赤ワインである。
地元のタナ種(4060%)にカベルネ・ソヴィニョン&フラン、フェール・セルヴァドゥー種を混ぜるが、このタナ種の使用割合の多いものを、
<キューヴ・トラディショネル>と呼んで区別している。これは長寿で、出来の良い年のものは10年以上寝かせてはじめて真価を発揮する。
近年、野心的生産者が、オークの新樽を使って和らげ、素晴らしい品質のワインを生み出している。
- 生産量
- 68,756hl (1,260ha)
- 主品種
- <赤>タナ、カベルネ・ソヴィニョン&フラン、フェール・セルヴァドゥー。
- Key Vintages
- 2002,2001,2000.1998,1997,1996.
Pacherence du Vic-Bilh (パシュランク・デュ・ヴィク・ビル)
マディランと同一地域内で造られる白ワインに付けられているAC。古くから有名なのは甘口(モワルー、Moelleux)で、繊細で円やかな力強さがある。長寿。
辛口の方は、<Sec>を付けて、<Pacherence du Vic-Bilh Sec>とACを名乗る。若飲みタイプで、花の香りと果実味が特徴でバランスがいい。
主品種はクールビュ、プティ・サンマン(単独で80%以内、併せて60%以上)で、アルフィアック、ソーヴィニヨン・ブブランを混ぜる。
生産量 : <甘口>7,328hl (193ha) <辛口>4,205hl (74ha)
Key Vintage : 2003,1999,1997,1996.
なお、このACの名前は、この地の方言で「ふるい地方(ヴィック・ビル)」の「並んだ杭(パシュランク)」を意味し、昔この地では杭に結び付けて葡萄を栽培していたことを示している。
Jurançon (ジュラソン)

中心の町・ポーはナバール王国の首都であった。ブルボン王朝初代の国王アンリ4世の故郷である。ジュラソンのワインが王の洗礼に使われたから、以来、ブルボン王朝の王室の洗礼用ワインとなったことで有名である。
南西地方のリダー格の白ワインである。

<甘口>は、貴腐で造るのではなく、木に付いたまま葡萄果を乾燥させ、過熟状態にし、それを仕込む。複雑で繊細な香りを持ち、口当たりのいい黄金色のワイン。長寿タイプ。
<辛口>は、華やかな香りで、爽やかな軽快な口当たり、淡い落ち着いた色のワイン。早飲みタイプ。AC表記は<Sec>を付けて<Jurançon Sec>を名乗る。
- 生産量
- <甘口>27,219hl (280ha)、<辛口>15,472hl (167ha)
- 主品種
- <白>グロ&プチ・マンサン、グルビュ
- Key Vintages
- 甘口: 2003,2001,2000,1999,1998.
Béarn (ベアルン)
中世修道僧が品質向上に努め、17世紀、この地方の新教徒の多くが英国やオランダに亡命したことによって、これらの国々に広まり、輸出によって大いに発展した。
多くは若飲みタイプで、赤・ロゼ・白が造られている。
<赤>は、タナ、マンサン種を主に使い、マディランに似たところもあるが、非常に個性的。
骨格のしっかりした、サクランボの香りを持つワイン。
<ロゼ>は、生き生きしてフルーティー、光沢のある色調で、芳香豊かで繊細。
<白>は、透明感のある淡い黄色で、芳香高く生き生きとした辛口。
- 生産量
- 13,774hl (258ha)
- 主品種
- <赤・ロゼ>タナ、カヴェルネ・ソーヴィニヨン&フラン、マンサン、クルビュー。
<白>グロ&プチ・マンサン、グルビュー、ラフィア、カマラレ、
ソーヴィニヨン&フラン。
Irouléguy (イルーレギ)

この地の、巡礼で栄えたサン・ジャン・ピエ・ド・ポールの町には、城壁と石畳の美しい古い町並みが残っている。
葡萄畑の発祥は、中世のロンスヴォー修道院である。
このバスク地方は、葡萄栽培には最適な気候で、かっては、広大な葡萄畑があった。フィロキセラ禍以前は、バイヨンヌ港から、大西洋を経由して、イギリス、オランダ、ドイツへ輸出されていた。フィロキセラ以降立ち直れず、最後に残った畑がこのAOCである。
ピレネー山麓にあるから畑は段状で、危険なほど険しい。出来るワインは、<赤>が3分の2。
濃い赤色で、肉付きよく滑らかで芳香に富む<赤>は、タナ種を混ぜるからタンニンが独特で力強い。熟成にも耐えるものも少なくない。まさにバスクならではのワインである。
<白>と<ロゼ>もあるが、共にフルーティーで爽やか。若飲みタイプ。
- 生産量
- 7,700hl (215ha)
- 主品種
- <赤・ロゼ>タナ、カルベネ・ソーヴィニヨン&フラン
<白>グロ&プチ・マンサン、グールビュ、
