ボルドーの3Mと言われ、フランスを代表する作家がいる。
モンテーニュ、モンテスキュー、モーリヤックである。
16世紀のモンテーニュと18世紀のモンテスキューは貴族。
祖先が財をなし、貴族に成り上がった法服貴族である。
20世紀のモーリヤックは富裕な大ブルジョワの旧家で、世が世ならモンテーニュやモンテスキュー同様の貴族であったに違いない。
さらに興味深いことは、3人が3人とも、葡萄園を持つワイン生産者の家系であることである。
このワイン生産者と言うものがどういう社会的地位にあるものか、20世紀のモーリヤックがその著書に中で語っている。
「この商人の町で、私は世の中が平等ではないことを教えられた。伯母からは、ワイン取引以外の商いに手を染めるのは恥だと教え込まれた。しかし、そこにもなお様々な序列があることを忘れてはならなかった。上質のワインを売る者は並のワインを売る者より偉かった。並みのワインだけを売る者はせいぜい一介の医者か助教授と同等とみなされた」と。
フランソワ・モーリアック
(Francois Mauriac、1885−1970)
モーリアックは、幼くして父を亡くし、敬虔なカトリック信者の母に、厳格に育てられる。ボルドー大学で文学士の資格を得
ると、21歳でパリに出て、23歳の時に発表した処女詩集『合掌』が当時の文壇の大御所パレスに認められる。
その後、20を越える小説作品を発表。第2次大戦中には左翼作家にまじって抵抗運動に加わり、52年にはノーベル文学賞を受賞。その後も、過酷な植民地支配に抗議するなど、誠実なカトリック作家としての生涯を送った。
背景や題材の多くを故郷ボルドーに採り、個人と家庭、信仰と肉、エゴイズムと宗教意識の葛藤を主なテーマとした。
文体は古典的で、端正にして精緻、構成もきわめて巧妙。
独自の内的独白の表現手法の心理小説家として独自の地位を持つ。
代表作「テレーズ・デスケルウ Therese Desqueyreux」がそうだが、他の作品にも、故郷ボルドーヘの愛着と憎悪、逃避と牽引といった相反する感情が色濃く映し出されている。
