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何故同じ品種から全く違うワインが出来るのだろうか? |
![]() 「ワイン用のぶどうの木は、まず、水拗け」と言われ、土壌に関しては、その化学的な成分よりも、水捌けがよく、根に十分酸素を供給できる土壌の構成と構造が重要視される。銘醸地は大なり小なり皆傾斜地である。
ブドウの樹は、必然的に地下深く根を伸ばし、地上の気候の変化に関わりなく、安定して水分を吸収しようとする。 土壌の種類とワインの品質の関係は非常に微妙なものがあるが、一般的には、石灰質の土壌からはまろやかでふくらみのあるワインが得られ、粘土質では色が濃くしっかりした酒質のものが造られ、理土質では軽やかで繊細な味わいのワインが生まれると言われている。 肥沃な土地は、ブドウの樹の成長をよくし、収穫量も増えるが、それに反して果実そのもの品質は落ちてくる。従って、ヨーロッパでは、古代から麦のような穀物が育たない痩せた土地にぶどうが植えられてきた。 |
◆ 何故、ヨーロッパの銘醸地は、ぶどう栽培の北限近くにあるのか?
ブルゴーニュ以北の気候は安定しているとは言い難い。ぶどう栽培に様々な障害に襲われる。不規則な降雨、
季節外れの寒さ、遅霜、何よりもブドウ栽培者が恐れる雹等に見舞われることが少なくない。農家の苦労は地中海世界の比ではない。
しかし、この悪条件を長いブドウ栽培の歴史が乗り越え、世界の冠たるあの芳醇な味わいのワインを生み出している。
ところが、一方の地中海世界は非常に気候に恵まれている。我々日本人から見ると、放っておいてもブドウは育ち、いくらでもいいワインが出来るような気がする。しかし実際は、北の方が、はるかに良質のワインを大量に生産している。一般的に、ブドウはよく熟し糖は十分に乗るのだが、酸が減りすぎて大味なものになってしまうからと言われているが、ぶどうの栽培がしやすいことと、いわゆる銘醸地は必ずしも一致しない。
葡萄栽培は、なによりも自然条件に左右されるものではあるが、自然の好条件だけが銘醸地の葡萄畑を造ったものではない。(言い換えれば、自然条件だけが銘酒を生み出すものではない)
それは、幾世代にもわたる畑への「人間の営為」が積み重ねられた結果である。
*この辺に興味のある方へのお薦めは、ロジェ・ディオンの、膨大な著書もあるが、まず、「ワインと風土」。更に、現代のワイン造りの思想とワイン産地の成り立ちを示唆する名著書が、 麻井宇介の「ワインづくりの思想-銘醸地神話を超えて」。

「ワインと風土-歴史的地理的考察」 人文書院
著者: Roger Dion (ロジェ・ディオン 1896-1981)
パリ大学、リール大学を経てコレージュ・ド・フランス教授として歴史地理学を講ずる。「風景とぶどう畑-歴史地理学に関する試論」「フランスにおけるブドウ畑とワインの歴史」等の著書は名醸地成立に関するバイブル。
訳者: 福田育弘
1955年名古屋生まれ、早大文学部仏文科卒、1985~88年仏政府給費留学生としてパリ第3大学に学ぶ、現在、早大教育学部教授。専門は20世紀フランス文学。「ワインと書物でフランスめぐり」他。ワインに関する著書・エッセー多数。

「ワインづくりの思想-銘醸地神話を超えて」 中公新書
ボルドーやプルゴーニュだけが永遠に偉大な産地だとする銘醸地信仰がある。第二次大戦後、醸造技術の進歩と品種の世界的拡散によって風土の壁は乗り越え、新世界には、新興産地が続出した。知識と技術を手にした造り手たちは、本当に造りたいものが何かを明確化してワイン造りに邁進している。
日本のワイン水準を飛躍的に高めた醸造家が、その豊かな経験と教養で、現代のワイン造りの思想を語る。
著者: 麻井宇介(あさい うすけ)
1930年東京生まれ、東京工業大学卒。メルシャン(株)のワイナリーや工場長を勤める。現在、酒造技術コンサルタント。
著書:「日本のワイン・誕生と揺籃時代」-日本経済評論社、「ワインづくりの四季」-東京書房、「論集・酒と飲酒の文化」-平凡社、「酒をどうみるか・麻井宇介対論集」-醸造産業新聞社、外多数。


