
ブルゴーニュのうまいワインを「ワインの王」と呼び、ボルドーのおいしいワインを 「ワインの女王」と呼んで、ワインをよく人間にたとえて表現する。
ワインのラベル表示を 「名乗る」などと言ったりするのもその例。
ブルゴーニュのワインは男を感じさせ、ボルドーのワインは女を感じさせることは確かだが、 これを単純に「男性的」「女性的」と捕らえると分からなくなる。
名古屋のワインレストラン 「桜喰亭」のオーナー安間宏見氏は、これを大変うまく、その著書「ワインの謎解き」 の中で解説している。
「男というものは筋骨隆々として屈強なだけではない。その内に弱さや優しさをもっているものだ。 女も同じだ。穏やかさや淑やかさの陰に、どんな苦難も受け入れて耐えぬく強さをもっている。 男には激しさの中に弱さがあり、女は穏やかさのなかに強さがある。ここがミソだ。 男の激しさの中に垣間見せる弱さが母性本能をくすぐることになるわけだし、 女も穏やかさの中にある芯の強さが、ただ甘えるだけではないかわいさになる。
このように男も女も一見すると矛盾するような要素をもっている。それが、 ブルゴーニュのワインとボルドーのワインにも共通している。
すなわち、ブルゴーニュのワインは「激しさ」の中に「弱さ」を持ち、 ボルドーのワインは「穏やかさ」の中に「強さ」を持っている。 それぞれ相矛盾した要素がそれぞれのワインの味の幅を広げ、深みを増すことになり、 多くの人がこの二つのワインに魅せられる。」
ボルドーとブルゴーニュに関する本は、毎年数々出版されている。丸善や紀伊国屋のワインブックの棚には、気の効いた題名の新しい本が沢山並んでいる。出てきては消え、消えては出てくるワインブックの中で、いつも鎮座しているのがこの2冊である。初版は20年以上も前に出版された本だが、単なる情報以上のワイン好きの心を捉える「何か」を語っているからであろう。日本に於けるワインブックの「古典」と言っても言い過ぎではないようだ。

